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やんちゃな王子の物語-原型-

2023年
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柴犬です🐶、こんにちは。やんちゃな王子の物語が外伝までようやく終わり、ホッとしています。ご一読いただいた皆様、最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。(_ _)

それにしても疲れました…(T_T)小説は年2回くらい書ければ上等と思っていたのですが、すでにノルマを達成してしまいましたから。(^^;)

実はそのきっかけとなったのが今回投稿した文章です。初めはエッセイを書こうと思っていたのですが散文のようになってしまい、それでもなんだかシックリこないので、「いっそ、小説にしちゃおうか。」と思い、やんちゃな王子の物語を書き始めた次第です。

この散文の終わり方はなんとなく悲しげですが、王子の物語は書いているうちに、「絶対にポジティブに終わり方にしてやろう。」と思うようになりました。フィクションにしてやるせない思いを昇華してやろうかと。癒やしと憧憬を込めた物語にしたかったのです。

そしてこの物語を書き切れた事で、王子のように心の中に溜まっていた澱のようなものを少しでも洗い流せたかなと思っています。そういう意味では、ちょっと大袈裟ですが(^^;)これからの僕の人生にとって思った以上の意味があったと思っています。

そのため、とりとめが無くて、申し訳ありませんが原型は原型として残しておきたいと思った次第です。次にいつ、こういうプロトタイプを思いつけるか解りませんが、またいつの日か降りてきてくれる事、その幸運に巡り会える事を願っています。

>柴犬

以前、僕にはとても心地のよい安らげる居場所が存在していた。そこで僕は常に守られて受け入れられ、全てが許されていた。自由に使える自分だけの部屋やベット、ふかふかのマットレスや洗い立てで太陽の匂いがする真っ白なシーツもあった。

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でもある日突然、熱したフライパンに落とした水滴が蒸発するようにそれは一瞬にして失われてしまった。そして気がつくと、僕は見知らぬ場所に放り出されていた。そこは古い貨物船に無理矢理作られた客室のような所で、大勢の人が騒がしく行き交い、埃が立ちこめる落ち着かない場所だった。そこにいた人々は、僕とは違う言葉で会話をしていた。使っている言語が異なっていたわけではない。ただ彼らの話している会話の内容がさっぱりが理解できなかったのだ。彼らは生意気でコミュニケーションが取れなかった僕を時に憤り、嘲り、そして警戒して遠ざけた。そこで僕は明らかに異人だった。やがて強い孤独感を持ち、殻に籠もるようになっていった。

それでもいつしか一部の人達は、悲嘆に暮れていた僕に声をかけて励ましてくれるようになった。彼らは僕を理解してくれようとしたし、僕も彼らを理解しようと必死に努力した。それから数人の友達もできて、楽しい時間を過ごせる機会も増えてきた。彼らから生きるための術も教えてもらい、ずいぶんとタフにもなった。

それでも僕には、彼らの好意を全面的に受け入れることはできなかった。僕の心の中には、いつの間にか消滅したジグソーパズルの欠けた「ピース」のような大きな穴ができていたからだ。

やがて彼らは、それぞれの生まれた国に着くと船を降り、それぞれの家族の元へと帰って行った。純粋な好意から僕にその国に住まないかと誘ってくれる人もいたが、僕は船から降りる事を拒み、海上に止まるを選んだ。

それから僕は海上をいつまでも彷徨い続け、結局は何者にもなれなかった。失われた王国の復興という叶わぬ夢を描きつづけて死んでいった王様のように。

イメージの中の居場所は、決して損なわれないし、変化もしない。粗野で暴力に満ちあふれた世界からは遮断されており、母親の羊水の中にいるように安らぎのある場所だ。でもそこには、本当の意味での温かみは存在しない。

現実の居場所は、時には退屈で、失望を感じる事もある所だ。そして時の流れとともいつかは必ず失われていく。その代わり、確かな温かみや優しさが存在している。それはイメージの中では決して得られない、かけがいのないものだ。

海上を彷徨い続けるうちに僕はこう思うようになった。欠けた「ピース」は探し続けるものではなく、自らが溶けて変化して、形を変えながら埋めていくものだったんじゃないか、一度心に穴が開いてしまった人間は、そうやって生きていくしかなかったんじゃないかと。

そうしなければ心はきっと、永遠に満たされる事はないのだろう。道ばたで迷子になりいつまでも泣き止まぬ子供のように。

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