地下鉄 寝過ごし 車庫 デンゼルワシントン | ねじまき柴犬のドッグブレス

地下鉄の謎

2023年
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まだ学生の頃だから、大昔の話だけど僕は地下鉄で乗り過ごしてそのまま車庫まで行ってしまったことがあった。北千住から千代田線に乗って、終点の代々木上原で小田急線に乗り換えなきゃ行けなかったんだけど、寝過ごしてしまい降りることができなかった。終点に着いた時のアナウンスで目が覚めたんだけど、間に合わなくて、気づいたときには無情にもドアは閉まってしまった。

幸い車庫というより、外の引き込み用の線路のようなところで、外はまだ明るかったし初めにうちは少し余裕があった。でもそのうちに社内の蛍光灯が消え、外も薄暗くなってきたのでだんだん不安になってきた。このまま誰にも気づかれずに放っておかれてここで一夜を過ごすのか?何しろ、バックの中にはペットボトルのお茶くらいしか入っていなかったしトイレに行きたくなったらどうすれば良いのか?遠くに車両点検をしている作業員の姿が見えたので、ダメ元で手を振ってみたりドアを叩いて声をかけてみたりしたけど当然気づかれなかった。

それからどのくらいの時間が過ぎただろう?実際には30分もなかったのかもしれないが、僕には時間の感覚が全くなくなっていた。今考えるとすごく馬鹿馬鹿しいけど僕の想像力は時間が経つにつれて膨らみ始めた。何で無人の地下鉄の乗っていたのかと後で警官から職務質問をされるのか?深夜まで車内にいて眠っていたら、デンゼルワシントンみたいな将校に突然起されて身分照会をされて、乗客名簿からも抹消されて(そんなもん地下鉄にないけど)連行されて米軍基地で強制労働をさせられるとか…。

でも実際にそんなことはなくて、そのうちに駅員が車内の見回りにやってきた。僕の姿を初めて見たときは少し驚いたようだったが、よくあることなのかすぐに冷静な表情になった。僕はしどろもどろに事情を説明したが、駅員はそれを遮るように「この電車もうすぐ出ますから、このまま待っていてください」と優しく語りかけてくれた。

それから少しして、駅員の言う通り電車は動き出して始発電車としてホームに乗り入れた。何人かの人は車内にいる僕を水族館の魚を見るような感じで「ぽかーん」とみていたけど、僕はドアが開いたら何事もなかったかのようにゆっくり電車を降りて、小田急線に乗り換えた。

今なら必ず駅員が車内を見回って起こしに来るからあり得ない話だけどこれもバブル期ならでは事で、当時はいい加減だったんだろうなと思う。結構恥ずかしい思い出だけど、まぁ貴重な経験だったかな。

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