今、昭和歌謡とか昭和の頃に流行ったもの、常識だったものを特集で紹介する番組が増えている。ただ内容的には昭和というかバブル期のものが多い気がした。何でだろうか考えてみた。
音楽で言うとおそらくその頃は、今の時代にはないリズムやセンスやノリがあったからじゃないだろうか。単調だけどその分伝えたいものが解りやすかった。また、リフレインされる歌詞が多かったので力強さがあった。
それとやっぱり当時の日本の経済状態が反映している。景気が良く今と違って中流と言われる人達にもちゃんとお金が回っていた。具体的には、ベースアップがあったり、色んな手当も付いたりしていた。だから現在ほどの格差はなかった。僕は当時、定職に就かずフリーターをしていて不安もあったけど、とりあえずアルバイトはたくさんあって困らずに生きていくことができたから。
逆に良く言えばおおらか、悪く言えばいい加減な時代だった。例えば個人情報保護法がなかったので、FAXの誤送信をしても謝れば全く何の問題もなかった。僕の話で言うと海外旅行から帰ってきたら、翌週には旅行代理店から「海外旅行に興味はありませんか?」という電話がかかってきた。面倒なので「海外旅行には興味はありませんし、行った事もありません。」と行ったら「嘘つけ!」と言われてガチャ切りされた事があった。今だったら考えられない話だ。
それでも僕はクリスマスに馬鹿高いホテルを予約したこともない。ティファニーのネックレスをプレゼントしたこともない。生活には困らなかったけど、そんなにお金もなかったし、何よりそういう行為自体馬鹿らしいと思っていたからだ。政治でも環境問題でも真面目な話をしようとするとすごく煙たがれた時代だった。だからバブルを楽しめたかというと、乗っかれなかったなというのが正直なところ。
ただ各地で紛争はあったのだろうけど大きな戦争もない比較的平和な時代だった。ベルリンの壁が壊されてドイツが統一された。※注ペレストロイカがあり冷戦も一段落して核戦争の危機感もずいぶんなくなっていた。その事も時代背景にはあったと思う。
その後、バブルが崩壊して経済状態が悪化した時、1995年に阪神・淡路大震災が発生して、オウム真理教が地下鉄サリン事件を起した。それからはバブル時の脳天気な気分なんて完全に消し飛んでしまった。僕はたまたま阪神・淡路大震災のあった日に家にいてテレビで見ていたがとても現実に起こったことは思えなかった。地下鉄サリン事件もそうだ。極めつけは2001年の9.11アメリカ同時多発テロ事件だったかもしれない。明らかに世の中が暗い方向に向かい始めた転機だった気がしている。
繰り返しになるけど当時は本当にいい加減な時代だった。あの頃にもっと環境問題や福祉の問題や国の借金やらをなんとかしておけば、今こんなに苦労をしていなかったんじゃないかとも思ってしまう。
ただ矛盾しているようだけど、何だかんだ言ってバブル期には懐かしさとともに強く惹かれる魅力がある。だから今、ブームになっているようにも思う。日本という国の年齢が、人口減少や経済の衰退があっていわば、くたびれかけた中年期にさしかかっているとすると、バブル期は世間知らずだけど、やんちゃな高校生くらいの時期に思えて、その頃の無邪気な映像を見ているような気分になる。色々ごちゃごちゃと書いちゃったけど、振り返るとやっぱり良い時代だったのかなぁ。教訓も多いけど、平和で格差の少ないおおらかな時代だったから。
注)ペレストロイカ
旧ソ連の末期にゴルバチョフがすすめた改革。「たてなおし」の意味。旧ソ連では、共産党一党支配と中央から指令をだして動かす経済の体制が非能率や技術の遅れを生んでいた。1985年に共産党書記長に就任したゴルバチョフは、情報の公開、議会民主化、市場原理の取り入れ、アメリカとの協調・軍縮などで,東ヨーロッパの民主化に勇気をあたえ、冷戦の終結をも実現した。ただし国内では経済が混乱し、民族紛争に火をつけて、1991年にはソ連の解体をもたらした。
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