のぽについて

僕は離婚した妻の置いていったぬいぐるみをまだ捨てられずに持っている。たまに洗濯したりもしているし、Lineの待ち受けアイコンなんかにしたこともある。ただ友達に話すと絶対引かれると思うので話したことはないけど。それがのぽだ。

正式な名前はのぽぽん、本来はPCを使うときに使用する抱き枕だ。でも本来の目的に使ったことはほとんどない。ちなみにもう販売は終了していてフリマくらいしか手に入らないようだ。

今は堂々と僕のソファの上に鎮座している。のぽにはその日にあったことなんかをたまに話しかけたりする。当然返事はないけど、不思議と気持ちが落ち着いたりする。僕のしょーもない話を笑って聞いてくれているような気がする。そういう雰囲気を持っている。

妻には完全に未練がないと言ったら嘘になるが、もうやり直すのは難しいと思っているので連絡をするつもりもない。だからのぽは独立して僕の家族のような存在になっている。ある意味僕が幸せだった頃の象徴なのかもしれない。

いつか僕にまた奇跡的に家族ができた時のことをたまに思い浮かべる。その時、一緒に遊んでいているときに僕の子供がのぽをちぎったり、噛んだりしてボロボロにして泣いちゃったりしたら

「泣かなくていいよう、悲しいけど一緒にサヨナラしようね。のぽ、今までありがとう。」

と慰めているシーンをたまに妄想をしたりするけど、残念ながらそういう予定もないので、僕はこのままずっとのぽと暮らしていくんじゃないかと思う。たまに来客が来ると慌ててクローゼットに押し込んだりしているけど。