東京都町田市 東京都大田区 キャンパス タイムスリップ 既視感 村上春樹 ダンスダンスダンス 羊男 肌感覚 | ねじまき柴犬のドッグブレス

これが柴犬の移住先を探す旅の3日目の出来事だった…。

2024年
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GW後半の最終日に、過去に自分が住んでいた場所を巡ってみた。

■行ってみた場所
1.大学生の頃、2年間住んでいたアパート
 東京都町田市
2.通っていた大学
 東京都町田市
3.生家(4才くらいまで住んでいた) 
 東京都大田区
4.離婚する直前まで、5年くらい住んでいたマンション
横浜市港北区

■乗り継いだ電車
東横線、JR横浜線、小田急線、JR南武線、東急多摩川線

まず向かったのは、大学生の頃に住んでいたアパート。家賃3万円、風呂、トイレ共同だったボロアパートは影も形も無かった。街並みもすっかり変わっており、にんにくたっぷりのガツンとくる焼き肉定食がとても安い値段で食べられた定食屋の跡地には美容院が建っていた。

でもその街は元々小洒落た街で駅前には小中高一貫のお上品な大学があり、休日にも常に警備員が立っていて、不審者が侵入しないか常に目を光らせていた。僕が行った日も休日なのに警備員がいて、ああ、やっぱり変わっていない、思い出はあるがこの街は好きじゃないなと直感的に思った。

それですぐに大学があった隣の駅まで行った。駅前はスタバとかが出来ていてすっかり、小綺麗に様変わりしていた。それでも駅をおりた瞬間、何だかぞわぞわした。それは不安や嫌悪感じゃなく、行く先に何かが待っているようなワクワク感だ。それが何なのか確かめたくて、すぐに15分ほどの道のりを歩いて足早にキャンパスへと向かった。

ほとんど無人状態のキャンパスは相変わらずまともな清掃をされていないのか、中庭の草木は荒れ放題、朽ちかけた木の椅子が放置してあったり、池の水もドロドロに濁っていた。喫煙所には、煙草の空き箱が散乱していた。真新しい校舎や食堂が対照的に建てられていたが、基本的には僕が通っていた頃とほとんど変わっていなかった。扉が開放されていて教室に入れるような棟もあり、こんなんで良いのかと思えるくらい不用心だった。入り口に当時と全く同じ場所に自販機が置いてあった。そこで学生時代と同じように缶コーヒーを買い、ベンチで一休みするとまるでタイムスリップをしたかのような既視感があった。

俄に僕の中で何かが弾けた。心のネジが巻かれ、錆び付いた歯車が動き出した。冬眠カプセルから目覚め、数十年止まっていた時間が動き出したような気分だった。ここはもう僕のいるべき場所ではないのは頭では解っている。それでもまだここは自分を受け入れてくれる場所のような気がした。

少し大袈裟だが、村上春樹の小説、ダンスダンスダンスの中で主人公がドルフィンホテルで、羊男に出会ったシーンを思い出した。羊男は確か主人公にこう語っていた、「ここはあんたのための場所なんだよ」と。

しばらくキャンパスをぶらぶらしてから駅にまた向かったが、すれ違う人達に家族連れはほとんどなく、僕と同じくらいの年齢の人が一人で歩いている姿をよく見かけ、親近感が湧いた。駅前で立ち食いそば屋に入ったが店員さんの笑顔にもとても癒やされた。

それから電車を乗り継いで生家に向かった。家は残っているが、父が死んでから売却しているので、親類は住んでいない。立て替えており僕が住んでいた家でもないので、家自体に思い入れもない。それでも、何故だか亡くなった父や母に対して(離婚はしてしまったが…)様々な思いがこみ上げて切なくなった。この世に生を授けてくれた事に対する感謝の念、父と母の期待していたような生き方ができなかった事に対する申し訳なさ。こんな気持ちを感じた事は今まで一度も無かった。確かにこの街はかけがいのない場所だ、そう感じたが僕にとっては、あたかも祈りを捧げる霊園のような場所だった。

ふと近くに福山雅治の歌のタイトルになっている桜坂があるのを思いだし、適当に探し歩いてみたら簡単に見つかった。こんなに近くにあったんだと驚きを感じた。それで思わず写真を撮りたくなった。残念ながら時期外れだったので、今度は桜が咲く頃に来ようと思った。

最後に離婚する直前まで住んでいたマンションまで行ってみた。5年くらいだろうか?住んでいった場所だ。全く変わらず同じ場所に建っており、一緒に買い物をしたスーパー、週末にモーニングを毎週のように食べに行ったファミレスもそのまま残っていた。それでも時間軸からすると一番記憶に残っていて良いはずの場所なのに、なぜだか僕の心を揺さぶるものはなかった。以前にあった僕を受け入れてくれるような空気感もなかった。きっと妻と一緒に過ごしたからこそ、感じられたものなのだろうと改めて思った。

これが柴犬の移住先を探す旅の3日目の出来事だった…。このフレーズがすっかり気に入ってしまった。(^^;)

余談になるが、翌日職場に大学の関係者からプリンターの修理依頼があり、偶然僕が対応した。直接ではなく、担当しているエンジニアと会話をしただけだったが、それでも日に5,000件ほど入るコールセンターで、電話が僕に回ってきたのは奇跡的な事だった。

その事がまだモヤモヤとしていた僕を後押しした、移住するならそこしかないと。まるで古い友人に「ぐだぐだ悩んでいるくらいなら、俺の所に来いよ!」と冗談交じりに言われているような気がした。もちろん、現実的な問題として経済的な問題、通勤時間が長くなる事や街の利便性も改めて考えてみる必要がある。一時の感情ではなかったのか、何度か行ってみて再確認する必要もある。でも今は理屈ではなく、その場所の空気感を感じ、肌感覚に従って動いてみるのが一番の正解なんじゃないかと思った。

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