VRおじさんの初恋 VR 野間口 徹 坂東彌十郎 井桁 弘恵 堀内敬子 田中麗奈 ウニ味のプリン ロスジェネ | ねじまき柴犬のドッグブレス

「VRおじさんの初恋」って何だったのか?

2024年
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先日、NHKの夜ドラ「VRおじさんの初恋」が終了しました。前半は直樹(野間口 徹さん)がVR世界で女子高生のアバター(倉沢 杏菜さん)となり出会う美しい人、初恋相手となるホナミ(井桁 弘恵さん)との幻想的な旅が中心、後半は現実の穂波が実は70代の男性(坂東彌十郎さん)だったことを知り、そのギャップに悩みながらも穂波が抱えている病気や複雑な家族関係のことを知り、放っておけずに否応なくその渦に巻き込まれていくという2部構成のお話でした。詳しくは下記でご覧下さい。(^_^;)

VRおじさんの初恋
「現実世界」と「バーチャル世界」。2つの世界を行き交いながら、中年サラリーマンの初恋を描く新しい形のヒューマンドラマ人生において成功体験と言えるものが無い、中年の独身男性・直樹(野間口徹)。年下の上司...

始めのうちは、人との関わりを避けVR世界に没頭する直樹に共感していました。「銀河鉄道の夜」を連想させるCGの完成度の高さ、ホナミ役の井桁さんの可憐で無邪気な可愛さや直樹役の倉沢さんの無気力でどこか悲しげでなげやりな演技に見事にハマりました。(^_^;)そして毎日のように遅刻をして上司(細田 善彦さん)にリストラを何度も勧められる苦しい現実とのギャップがVR世界の素晴らしさをより引き立たせてくれました。

でも、後半になると僕自身がギャップに悩まされる事になりました。ホナミのアバターは会社の同僚・佐々木さん(堀内敬子さん)ではないかと単純に思っていましたし、現実の穂波と会った後も、娘の飛鳥(田中麗奈さん)が実はホナミではないかと一瞬想像してしまい、そうでない事が解っても、これからひょっとしたら娘の飛鳥さんとお付き合いをする事になるんじゃないかという思いが頭から離れなかったからです。

様々なトラブルや葛藤を抱えた主人公が登場人物の誰かと必ず恋仲になり、すったもんだがありながら最後はハッピーエンドになる。これは昭和のドラマの一般的な図式でしたが、この先入観から自分が離れられていない事がよくわかりました。思考回路が単純ですよね…。(^_^;)

また後半は長年の確執を抱えていた穂波と飛鳥、それを気持ちに素直には表せないコミュ症的な穂波の孫の葵(柊⽊ 陽太くん)との関係性をテーマにした家族の絆を描いたドラマではないかと思ったり、直樹が現実の穂波が初老の男性と知った後も(葛藤はありましたが…)VR世界でキスをしたりしていたので、ジェンダーレスなラブストーリーのようにも思えました。特にラストシーンで現実の穂波が亡くなった後に、取り残された直樹がVR世界でのホナミとのを思い出を忘れずに生きていこうと決心して話が終わりましたので、その思いは強く残りました。

ちなみに作者の暴力とも子さん(すごいペンネームですね…)は自身の解説記事の中で、テーマの一つとしてロスジェネについて語っていました。40代の就職氷河期を通り過ぎてきた孤独な独身男性、そして世代の違う会社の上司や同僚達のそれぞれの感覚の違い云々。そんなに深いテーマがあったんだと愕然としました。(>_<)

確かに直樹は、穂波の家族の問題に関わるようになり、穂波と娘の飛鳥さんとの長年の確執を解決するためにどうすればいいか、孫の葵くんや飛鳥の秘書の前原さんと一生懸命考えるようになり、現実社会でも人と触れあう事の大切さを知り、人間的にも成長していきます。他の登場人物達も何かしら疑問を持っていた生活から一歩足を踏み出し勇気を持って新しい世界に飛び込んでいきます。

でも、あえて言うならば何かが劇的に変化したわけではない。果たしてハッピーエンドと言えるのだろうか?ラブストーリーだったのか?等々、疑問が残り個人的にはとてもモヤッとした終わり方でした…。

例えるなら、美味しいプリンを食べていたら突然、醤油をかけられてウニ味になってしまったような気分です。ウニはウニで美味しかった。それでも時々醤油がかかっていないところを食べると突然、プリン味に戻っている。とても混乱しました。(^_^;)直樹がカレーとパフェに例えて「現実とVRは別物」だと言っていたのと近い感覚ですね。

結局のところ、このドラマはハッピーエンドかどうかを考えたりカテゴリー分けをしようとする事自体がナンセンスで、VRと現実、それぞれが絡み合う美しい世界観をただ楽しめれば良かったんじゃないかと思いました。

ただ面白かったかどうかって言われると正直、即答ができないとても悩ましいドラマでした。きっとこれから色々なドラマを純粋に楽しむためには、僕自身のアップデートも必要なのかなと思った次第です….。(^_^;)

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